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2026年10月号2026年10月28日公開

月間経済レポート 2026年10月版

2026年10月27日公表の政府「月例経済報告」に基づく景気動向解説。

1. 今月のポイント

今月の基調判断(政府見解)

表現変更あり
景気は、緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある。

※先月までの「中東情勢や自然災害の影響を注視する必要がある」から、「自然災害」の文言が外れた(3月〜7月と同じ表現)。先行きの表現も同様に「中東情勢の影響を注視する必要がある」となった。

重要チェックポイント

個人消費
持ち直しの動きがみられる
輸出
このところ持ち直しの動きに足踏みがみられる
業況判断
全体としては改善の動きがみられる
企業収益
改善しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある
国内企業物価
このところ横ばいとなっている
消費者物価
このところ上昇している

今月のまとめ

基調判断の表現が変更され、先月までの「中東情勢や自然災害の影響」から「自然災害」の文言が外れ、「中東情勢の影響を注視する必要がある」となった(3月〜7月と同じ表現)。個別14項目のうち、輸出(持ち直しの動き→このところ持ち直しの動きに足踏み)、業況判断(おおむね横ばい→全体としては改善の動き)、国内企業物価(このところ上昇テンポが鈍化→このところ横ばい)、消費者物価(緩やかに上昇→このところ上昇)の4項目で表現が変わった。9月の消費者物価(生鮮食品及びエネルギーを除く総合、固定基準)は前月比0.5%上昇、前年比2.4%上昇となった。関係閣僚会議資料では、個人消費は所得の増加に支えられ持ち直しの動きがみられるものの伸びは緩やかであり、中東情勢の緊迫化に伴う予想物価の上昇が消費者の景況感を抑えていると考えられること、食料品価格は高い伸びが続き、9月後半から価格上昇が加速していることが指摘されている。

月例経済報告:先月からの主要変更点

分野9月月例10月月例
個人消費持ち直しの動きがみられる持ち直しの動きがみられる
設備投資持ち直している持ち直している
住宅建設総じて横ばいとなっている総じて横ばいとなっている
公共投資底堅く推移している底堅く推移している
輸出持ち直しの動きがみられるこのところ持ち直しの動きに足踏みがみられる変更
輸入おおむね横ばいとなっているおおむね横ばいとなっている
貿易・サービス収支赤字となっている赤字となっている
生産総じてみれば持ち直しの動きがみられる総じてみれば持ち直しの動きがみられる
企業収益改善しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある改善しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある
業況判断おおむね横ばいとなっている。ただし、先行きについてはやや慎重な見方となっており、中東情勢の影響を注視する必要がある全体としては改善の動きがみられる。ただし、中東情勢の影響を引き続き注視する必要がある変更
倒産件数おおむね横ばいとなっているおおむね横ばいとなっている
雇用情勢改善の動きがみられる改善の動きがみられる
国内企業物価このところ上昇テンポが鈍化しているこのところ横ばいとなっている変更
消費者物価緩やかに上昇しているこのところ上昇している変更

2. 景気全体の動き

公式見解

「緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」

個人消費は、所得の増加に支えられ持ち直しの動きがみられるが、その伸びは緩やかである。背景には、中東情勢の緊迫化に伴い、予想物価の上昇が消費者の景況感を抑えていることがあると考えられている。消費者物価は政策効果もあり全体として抑えられているものの、食料品価格は高い伸びが続いており(2026年9月の前年比は総合2.1%、食料品2.8%)、直近の動向をビッグデータで分析すると、9月後半から価格上昇が加速していることから、中東情勢の影響による価格転嫁が進んできたことがうかがわれる。一方、企業の景況感は世界的なAI・半導体需要の強さを背景に、製造業を中心に改善の動きが顕著となっている。

生活目線の解釈

  • 日本はエネルギー価格の抑制策により、家計が直面する物価上昇率を海外諸国よりも低く抑えている(2026年3月〜平均の前年比:日本1.7%、アメリカ3.6%、ユーロ圏3.1%、英国3.0%)。ただし、日本は食料品価格の上昇が顕著であり、非耐久財の消費を中心に家計消費が抑制されていることが課題とされている
  • 賃上げに向けた官民の環境整備の下、日本の名目賃金は海外に遜色のない上昇率(2026年3月〜平均の前年比+3.7%)となり、実質賃金は物価高対策の効果もあって+2.0%と、アメリカ(▲0.3%)、ユーロ圏(+0.1%)、英国(+1.2%)より高い伸びとなっている
  • 今夏の個人消費の抑制には、一時的とみられる要因も影響している。夏物衣料・エアコン・外食には天候要因による下押しがみられ、自動車を含む耐久財消費では自然災害等による時期ずれの影響も考えられる。賃金に加え家計の財産所得(配当や受取利子)も増加傾向にあり、所得環境の改善が消費の持ち直しを支えていくことが期待される

3. 分野別の動き

個人消費

持ち直しの動きがみられる(先月と変わらず)

プラス面

  • 消費動向指数(CTI、8月):総消費動向指数は前月比0.1%増、世帯消費動向指数(総世帯)は前月比0.3%増
  • 実質総雇用者所得は緩やかに増加、消費者マインドは持ち直しの動きがみられる
  • 家電販売は増加は一服したものの持ち直しの動きが続く。外食は緩やかに増加

懸念点

  • 商業動態統計(8月):小売業販売額は前月比0.9%減。GDP速報(4-6月期2次速報)の民間最終消費支出は前期比0.0%増
  • 新車販売台数・旅行はおおむね横ばい。消費者マインドの動向には留意が必要

企業活動・設備投資

業況判断:「全体としては改善の動きがみられる」へ表現が変更

  • 業況判断:日銀短観(9月調査)の「最近」の業況判断DIは全規模全産業で前期差+3、製造業は+5と上昇、非製造業は▲1と低下。12月時点の「先行き」は「最近」に比べやや慎重な見方
  • 企業収益:2026年4-6月期の経常利益は前年比+24.6%(製造業+57.0%、非製造業+9.8%)。日銀短観(9月調査)の2026年度経常利益見通しは上期+9.4%、下期▲4.8%(6月調査は上期▲6.4%、下期▲6.6%)
  • 設備投資:持ち直している(法人企業統計季報・4-6月期は前期比1.5%増、機械受注は持ち直し)。設備判断DIは9月調査で製造業▲4、全産業▲4
  • 生産活動:総じてみれば持ち直しの動き(鉱工業生産指数8月は前月比2.4%減、9月見込み+3.2%、10月見込み+3.1%)
  • 輸出:アジア・米国・EU向けはこのところ持ち直しの動きに足踏み。その他地域向けは持ち直している。8月の貿易収支は赤字幅が拡大
  • 倒産件数:おおむね横ばい(8月830件→9月831件、負債総額は9月1,088億円)

雇用・物価

  • 雇用:改善の動きがみられる(完全失業率8月は前月から0.1ポイント上昇し2.5%。人手不足感は高水準)
  • 賃金:定期給与・現金給与総額は増加、実質総雇用者所得は緩やかに増加
  • 消費者物価:このところ上昇(9月:生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前月比+0.5%、前年比+2.4%、固定基準)
  • 国内企業物価:このところ横ばい(9月:前月比▲0.3%)。輸入物価(円ベース)もこのところ横ばい
  • 予想物価上昇率:1年後の物価上昇を予想する世帯は、9月は「5%以上10%未満」が28.2%、「10%以上」が19.4%

4. 金融市場の動向

株価

  • 日経平均株価は、66,700円台から70,600円台まで上昇した後、62,600円台まで下落した。
  • (※9/30〜10/23の動き)

為替

  • 対米ドル円レート(インターバンク直物中心相場)は、157円台から158円台まで円安方向に推移した後、156円台まで円高方向に推移した。
  • (※9/30〜10/23の動き)

金利

  • 短期金利(無担保コールレート・オーバーナイト物)は、1.22%台で推移した。TIBOR(3か月物)は、1.6%台から1.7%台で推移した。
  • 長期金利(新発10年物国債利回り)は、2.8%台から3.1%台で推移した。
  • 金融機関の貸出平残(全国銀行)は、前年比5.7%増加(9月)した。
  • (※9/30〜10/23の動き)

5. 政府の対応と先行きリスク

政府の対応方針

  • 「経済財政運営と改革の基本方針2026」(7月21日閣議決定)に基づき、「強い経済」と「財政の持続可能性」を一体的に実現
  • 様々なリスクに機動的に対応しつつ、デフレに後戻りしない「成長型経済」への移行を確実なものとする
  • 中東情勢対応:燃料油に対する緊急的な激変緩和措置を実施。代替調達・必要に応じた備蓄放出により原油の安定供給を確保
  • 令和8年度予算に加え、リスクの最小化の観点から編成した令和8年度補正予算を、情勢の変化に応じて適切かつ機動的に執行
  • 政府と日本銀行は引き続き緊密に連携し、経済・物価動向に応じて機動的な政策運営を継続
  • ※今月の月例経済報告の「政策の基本的態度」の本文からは、先月まで記載されていた電気・都市ガス料金の負担軽減策等、令和8年熊本地震の支援パッケージ、日本銀行の9月18日の決定の記述がなくなった。なお関係閣僚会議資料では、「被災者の生活となりわい支援のためのパッケージ」を引き続き着実に実行するとしている

先行きリスク要因

  • 食料品価格は高い伸びが続き、9月後半から価格上昇が加速。中東情勢の影響による価格転嫁が進んできたことがうかがわれる
  • 中東情勢の緊迫化に伴う予想物価の上昇が、消費者の景況感を抑えている可能性。消費者マインドの動向に留意が必要
  • 輸出はこのところ持ち直しの動きに足踏み。先行きも中東情勢等による下押しリスクに留意
  • 生産の先行きは持ち直していくことが期待される一方、中東情勢による下押しリスクに留意する必要
  • IMFの最新の世界経済見通しでは、成長率は4月時点から大きな変化がない一方、消費者物価上昇率は上方改定された。米国では長期金利の上昇に伴い住宅ローン金利も上昇し、家計の負担が増している
  • 日本銀行の短観(9月調査)では、設備判断DI・雇用人員判断DIともに不足超幅が拡大しており、人手不足感は高い水準
  • 金融資本市場の変動による影響には引き続き注意が必要

出典・参考資料