国際情勢レポート / 2026年9月
米特使のモスクワ・キーウシャトル外交でウクライナ停戦の糸口が模索され、BRICSニューデリー首脳会議が多極化秩序を可視化した。日米・米中の相次ぐ首脳会談、ロシア下院選での与党圧勝、欧州の移民・原発政策転換など、秋の外交シーズンを象徴する動きが集中した。
目次
最優先
トランプ「大戦時の同盟国」発言への外交的対応と日米関係の再確認
米中成果文書の「大戦時の同盟国」記述について、日米同盟の歴史的経緯や現在の意義への影響を慎重に見極める必要がある。日米同盟の歴史的経緯・現在の意義・台湾問題でのコミットメントについて、首脳・外交チャンネルを通じた継続的な確認を行い、米中「ディール外交」の余波から日本の利益を守る体制を強化する。
最優先
ウクライナ停戦交渉の行方を見据えた対露制裁・復興支援政策の整備
「数週間以内の計画公表」が見込まれる米ロ交渉の進展を踏まえ、停戦条件のシナリオ別に対露制裁の継続・緩和の判断基準をG7内で整理する。日本が主導するウクライナ復興支援の枠組みを早急に具体化し、停戦後の速やかな実施に備える。
重要
BRICSの「実務的多極化」への対抗としてのインド太平洋外交の強化
中印関係の改善を踏まえ、インドがBRICSとQUAD双方への関与を維持する中で、日印の戦略的パートナーシップを核としたグローバルサウスへの独自のエンゲージメントを深化させる。BRICSの決済システム(BRICS PAY)の進展が対露制裁の抜け穴にならないよう、G7内での制度的な歯止めの議論を推進する。
重要
イタリアの原発回帰を国際的文脈として活用した日本のエネルギー政策推進
G7主要国での原発回帰の潮流を活用し、日本の原発再稼働・次世代炉開発に関する国内議論を国際的な文脈で後押しする。イタリアとのSMR分野での技術協力の可能性を具体的に検討し、日本の原子力産業の国際競争力強化につなげる。
短期(3ヶ月)
停戦交渉の行方と大国外交の帰結を注視
中期(1年)
多極化秩序への構造的適応と多層外交の深化
長期(3〜5年)
自立的多層安全保障体制と国際秩序形成への主体的関与
今月の総括
9月は外交シーズンの本番として大国間の首脳外交が集中した月だった。米特使がプーチン大統領と3時間余り会談しシャトル外交を展開したが具体的進展はなく、ロシア下院選では与党「統一ロシア」が史上最多の355議席を獲得し継戦体制を内政的に固めた。BRICSニューデリー首脳会議では習近平主席が7年ぶりに訪印し中印関係の改善が演出されたが、中東・ウクライナ問題での加盟国間の立場の相違が浮き彫りになった。日米首脳会談(9/22)では米中首脳会談を2日後に控え事前のすり合わせを行い、続く米中首脳会談(9/24)では貿易休戦の2カ月延長やAI対話継続で合意する一方、トランプ氏が「米中は大戦時の同盟国」と発言し日本の懸念を呼んだ。欧州ではドイツなど5カ国がEU域外への移民送還施設設置で合意し、イタリアが40年ぶりに脱原発路線から転換する法律を成立させ、エネルギー・移民の両面で欧州の政策転換が顕在化した。