Finance
日本の国と地方の長期債務残高は約1,300兆円超(GDP比 約210%)で、主要先進国の中で最も高水準にあります。
出所:財務省 長期債務残高の推移
日本は自国通貨建ての国債を国内で消化している点が特徴で、海外依存度は低い状況です。国債の保有者は、日本銀行(約50%)、金融機関、年金・保険など国内投資家が中心。
国債等の保有者別内訳
出所:財務省 国債等の保有者別内訳 【令和7年3月末(速報)】
出所:財務省 国債金利情報
一般会計歳出総額:115.2兆円
出所:財務省 一般会計歳出の内訳
→ 金利が上昇すれば利払い費が急増し、財政の持続可能性が揺らぐ。
金利が1%上昇すると、利払い費は約3.7兆円増加すると試算されています。(財務省による試算)
例えば10年国債の金利が(2025/8/25現在)1.62%が2%へ上昇した場合、 +0.38 ポイント上昇(2.00-1.62)。「1% 上昇で +3.7 兆円」との計算ですから、
0.38 × 3.7 ≈ 1.41兆円
利払い費は約1.41兆円増加する計算になります。つまり金利上昇局面では財政負担が急増するリスクがあります。
※毎年約1/9~1/10くらいの長期債が借換えで“新しい金利”に置き換わります。さらに短期国債(TB/FB)は即時に近いスピードで金利が反映されます。 財務省はこうした借換え+新規発行の合計(=数年で金利が乗り換わるストック)を見積もり、それに「1%(=0.01)」を掛けることで年あたり利払い増を機械的に計算していると思われます。
3年間で金利が乗り換わる元本が約370兆円規模だとすれば、 0.01 × 370兆円 = 3.7兆円/年 の増加、という計算になります。 実際、平均償還年限(≒9.5年)なら3年で約3/9.5 ≒ 32%が乗り換え。これを1000兆円超の母集団に掛けると 約320兆円+ α(短期分・新規発行分)となり、数百兆円規模が“新金利”に晒される計算です。これが3.7兆円という数字の大まかな根拠と想定。
→ 高齢化に伴い医療・介護・年金が増え続け、歳出構造が硬直化。若年層への教育・投資が相対的に削られる。
2025年度の社会保障費は38.3兆円 (33.2%)と歳出の約3割を占めています。今後も高齢化が進む中で、社会保障費はさらに増加する見込みです。
→ 税収基盤の拡大が進まず、財政再建の余地を狭めている。
バブル崩壊後の低成長が続き、名目GDPはほぼ横ばいで推移し、税収が伸び悩み、財政再建の余地が限られてきました。
→ 政府はプライマリーバランス黒字化を掲げるが、具体的な歳出改革や増税方針は不十分。国際的な「財政規律への信認」を維持できるか懸念。
国際的な信用が低下すれば、国債の金利上昇や為替の不安定化を招くリスクがあります。円が売られれば円安になり、輸入物価が上昇し、国民生活に悪影響を及ぼす可能性があります。
→ 2024年度末に対外純資産が533兆500億円、(対前年末比+60兆8,613億円、+12.9%)に達しました。金利が上がることで、資産の運用益も増える可能性があります。
単純計算だが、
1330兆円 - 533兆円 = 797兆円
実質的な負債はおよそ797兆円という考え方もできます。
この考え方では 797兆円 ÷ 616兆円(2024年の名目GDP)× 100 = 129%のようにネット(債務から資産を引いた額)の政府債務残高対GDP比は約129%になります。
→ 金利上昇に伴い、国債の利払い費が増えてたら、資産の運用益も増えるのでは?という議論があります。
部分的にはYes:資産サイド(外貨準備・貸付債権・日銀保有分)のおかげで、金利上昇による国債費増加は緩和されます。
完全にはNo:日本政府の資産利回りは負債コストより低いことが多く、借入の増加コストを完全にカバーできるわけではありません。 特に、短期国債の比率が高い場合や、市場金利が急騰する場合は利払い負担の増加の方が上回るリスクがあります。
→ 対外純資産があるからそこまで深刻ではない、という意見もありますが、実際には流動性や運用リスクを考慮する必要があります。さらに、資産があるからといって本質的な財政的な持続可能性の問題は解決しません。
国債市場では 総債務額やGDP比が重視され、純負債視点だけで「市場が安心」とはならない場合もあります。
歳出・税制改革と経済成長の両立は不可欠であり、対外純資産に過度に期待するのは危険です。
→ 時期:上のStep A・Bが進み、プライマリーバランスが概ね解消/実質賃金のプラスが定着してから(景気に非連動の恒久増税は避ける)。
→ 増税なしで財政再建するには“複数の好条件”がそろう必要があります。 鍵は
「債務ダイナミクス(利子率 i と名目成長率 g の関係)× 歳出改革の実行力 × 税外収入の拡大」です。
基礎的収支(PB)の計算は以下の式が用いられます。
→ PBがGDP比▲5%(=赤字5%)未満なら、債務比率は安定して下がる
GDPの方が早く膨らむので、借金比率は自然に低下します。
→ GDPの2.5%相当のPB黒字が必要。
国が毎年「税収−支出」で2.5%分の黒字を出さないと、借金比率は増えていきます。
PB が負の値 → 国が毎年「税収−支出」で赤字でも、経済成長の方が勝っていれば債務比率は自然に低下します。
PB が正の値 → 債務が増えるペースを抑えるには、毎年 PB を黒字(GDP比でPB*以上) にする必要があります。
上記、計算では国のPBが0のとき、対GDP債務比は 約4.23ポイント低下します。PBが対GDP比で ▲2%(赤字)のときでも、対GDP債務比は 約2.23ポイント低下します。
→ ここ数年はインフレの影響による名目GDPの押し上げで 債務比率が自然に低下傾向にあります。
現実的な示唆:
粗い目安として、政策努力で恒常的に 1.5〜3%/GDPの改善(歳出削減+経済成長で自然に増える税収) を出せれば「増税なし」の現実味が出ます。
内訳イメージ:
・日本のような高債務国は、金利が低い状態ではPBが赤字でも債務比率を減らせる可能性があります。
・重要なのはPB赤字を制御不能に増やさないこと、そして経済成長を確保すること。
→ 具体的には「PBが対GDP比 -2〜-1%程度で推移」し、名目GDP成長が金利を上回る状態を維持すれば、債務比率は徐々に低下します。
ただし将来的に日本経済が成長局面に入ると考え方を変える必要があります。安定的に成長が見込めるようになると、金利上昇が想定されます。その場合、金利が名目成長率を上回る局面に入る可能性が高くなります。
→ 経済が加熱して金利が成長率を上回ると、インフレ効果では抑えきれない。この場合は、通常のPB黒字化を狙って財政規律を強める必要あります。
2024年度
2024年度
2025年8月25日現在
長期債務残高/名目GDP
政府債務残高が改善した割合
前提条件
2025年時点のデータ
名目GDP: 634兆円
国債残高: 1330兆円
GDP比率: 約211%
金利: 1.8%(将来予測の平均と仮定)
計算ルール: 名目GDPは毎年3%ずつ成長すると仮定
プライマリーバランス(PB)の対GDP比は、毎年0.2%ずつ改善すると仮定