「自分の住んでいる街の財政は健全なのだろうか?」そう疑問に思ったことはありませんか?
2026年現在、デジタル庁が公開している「Japan Dashboard(地方財政状況)」を使えば、全国の自治体の財政状況を誰でも簡単にグラフで確認できるようになりました。
しかし、画面に並ぶのは「経常収支比率」や「実質公債費比率」といった見慣れない専門用語ばかり。「数字が多すぎて、結局どこを見ればいいのかわからない」と感じる方も少なくないはずです。
自治体の財政指標は、単に「高ければ良い」「低ければ悪い」と言い切れるものではありません。指標によって、上がるべきものと下がるべきものが混在しているからです。
そこで今回は、デジタル庁のダッシュボードに掲載されている「広島県」のデータを例に、自治体の財政を「家計」や「会社の経営」に例えながら、その正しい見方をわかりやすく解説します。
地方財政(都道府県ごと)に関するダッシュボード | デジタル庁

目次
1.【基本のキ】自治体のサイズと、今年の「純粋な黒字額」
まずは、ダッシュボードの左上から中央上部に並ぶ、自治体のお財布の基本となる数字から見ていきましょう。
歳入総額・歳出総額・標準財政規模

- 家計に例えると: 世帯の総収入・総支出・「自由に使える基礎年収」
データを見ると、歳入(収入)が約1兆943億円、歳出(支出)が約1兆743億円となっています。ここで最も注目したいのが「標準財政規模(約5,999億円)」という指標です。
これは、自治体が標準的なサービスを行うために「毎年のように確実に入ってくる、使い道の決まっていないお金」のことで、家計でいう「手取りの基礎年収」にあたります。財政の本当の「お財布のサイズ」を測る基準になります。
実質収支・実質収支比率

- 家計に例えると:「今月(今年)の純粋な黒字残高」
- 理想の向き: 適正水準をキープするのがベスト(3%〜5%程度)
「実質収支」とは、総収入から総支出を単純に引いたもの(形式収支)から、さらに「来年度に繰り越して使うべき決まったお金」を差し引いた、純粋な黒字・赤字額のことです。 これが標準的な年収(標準財政規模)に対して何%にあたるかを示したのが「実質収支比率」です。
💡見方のポイント
通常は 3%〜5%程度 が財政運営上、適正(健全)な水準とされています。
- 低すぎる(マイナス): 財政に余裕がなく、マイナスになれば深刻な赤字経営を意味します。
- 高すぎる: 一見良さそうに見えますが、実は「市民のために必要な投資をせず、お金を貯め込みすぎている(行政サービスの不足)」という裏の側面もあります。
このデータでは、2020年度の3%台から、2024年度には0.8%まで下がっており、黒字の幅が縮小してやや余裕がなくなってきていることが読み取れます。
2. 【ストック編】貯金 vs 借金のバランスシート
次に、画面右上に並ぶ2つのグラフを見てみましょう。ここでは「貯金」と「借金」のバランスが右肩上がりなのか、右肩下がりなのかという「グラフの向き」が重要になります。
積立金現在高

- 家計に例えると:「預金通帳の残高」
- 理想の向き: ⬆️ 上がるのが良い
自治体が特定の目的(災害への備えや、将来の施設建設など)のために貯金しているお金(基金)の残り高です。 内訳には、景気悪化や災害に備える「財政調整基金」、借金返済のための「減債基金」などがあります。
残高が多いほど、不測の事態に対応できる余裕があることを示します。このデータでは、1,625億円とここ数年は高い水準の貯金を維持できていることがわかります。
地方債現在高

- 家計に例えると:「住宅ローンやマイカーローンの残高」
- 理想の向き: ⬇️ 下がるのが良い
自治体がこれまでに借り入れた借金(地方債)のうち、まだ返済が終わっていない将来返すべき残高です。道路や学校、上下水道の建設など、長期にわたって住民が利用する大規模な施設を整備するために発行されます。
現在高が多いほど、将来の世代が税金などで返済しなければならない負担が重いことを意味するため、基本的には「右肩下がりで減っていること」が理想です。データでは2兆25億円と、ここ数年で少しずつ借金を減らす努力をしていることがグラフから見て取れます。
3. 【通信簿編】自治体の経営状態を測る「財政健全化指標」

下半分に並ぶ4つの指標は、自治体の「通信簿」にあたる最も重要なエリアです。一般の人には難解に見えますが、「安全・注意(イエロー)・危険(レッド)」のラインを知ると、一気に身近になります。
① 財政力指数

- 家計に例えると: 「仕送りに頼らず、自分の給料だけで自立できているか度」
- 理想の向き: ⬆️ 上がるのが良い
自治体が標準的な行政サービスを行うために必要な経費を、どれだけ「自前の税収入」で賄えているかを示す指標です。 数値が高いほど財源に余裕があり、財力が豊かであると評価されます。
💡 見方のポイント
過去3年間の平均値で計算され、「1.0」を超えると、国からの仕送り(地方交付税交付金)を受けずに自立して運営できる「不交付団体(リッチな自治体)」ということになります。 日本のほとんどの自治体は1.0未満です。このデータでは「0.60」となっており、6割しか自前の税収入で賄えてないことになります。
② 経常収支比率

- 家計に例えると: 「給料のうち、家賃や保険料などの『固定費』が占める割合」
- 理想の向き: ⬇️ 下がるのが良い
自治体の「財政構造の弾力性」を測る指標です。人件費、扶助費(福祉手当など)、公債費(借金の返済)といった、毎年決まって出ていく「固定費(経常的経費)」が、毎年の決まった収入に対してどのくらいを占めているかを表します。
比率が低いほど財政に余裕があり、新しい事業への投資や突発的なトラブルにお金を回せる「健全な状態」であることを示します。
💡 見方のポイント
一般的に70%〜80%程度が理想とされますが、現代の日本の自治体は高齢化による福祉費の増加などで、どこも90%超えのカツカツ状態が続いています。 このデータでは「94.0%」となっており、使えるお小遣い(自由な予算)が全体の6%ほどしか残っていない状態であることがわかります。
③ 実質公債費比率

- 家計に例えると: 「年収に対する『毎月のローン返済額』の割合(フロー)」
- 理想の向き: ⬇️ 下がるのが良い(※上がると非常に危険)
1年間の標準的な収入に対して、借金の返済額(公債費)が占める割合です。 家計に例えると、「年収のうち、何%を住宅ローンやカードの返済に充てているか」という、目先の資金繰り(フロー)を表します。
この数値は過去3年間の平均値で計算され、低ければ健全、高ければ危険と判断されます。これには明確な「危険度ライン」が存在します。
- 18%以上(許可制ライン):新たに借金(地方債)をする際、国の許可が必要になります。
- 25%以上(早期健全化基準):財政の黄色信号(イエローカード)。財政を立て直すための計画作りを強制されます。
- 35%以上(財政再生基準):財政の赤信号(レッドカード)。国の管理下で財政を再建する、いわば「倒産状態」に陥るリスクが極めて高くなります。
💡 見方のポイント
このデータは「14.8%」です。危険ラインの18%未満ではありますが、グラフは右肩上がりに上昇しているため、借金返済の負担が年々重くなっている点には注意が必要です。
④ 将来負担比率

- 家計に例えると: 「ローン残高総額が、年収の何倍に膨らんでいるか(ストック)」
- 理想の向き: ⬇️ 下がるのが良い
自治体が「将来支払わなければならない負債(借金など)」が、1年間の財政規模の何倍(何%)あるかを表す、いわば借金の「総量」の指標です。
先ほどの「実質公債費比率」が毎年の返済額(フロー)を見ているのに対し、「将来負担比率」は将来返す全額(ストック)を見ています。地方債の残高だけでなく、職員の退職金の見込み額や、自治体が出資する外郭団体の隠れ借金などもすべて合算して計算されます。
危険度ライン(イエローカード): 都道府県は400%以上、市町村は350%以上。
💡 見方のポイント
このデータでは「188.7%」となっており、グラフが右肩下がりに減少しているため、将来世代へのツケを着実に減らしているという傾向が見て取れます。
まとめ:一目でわかる「指標の理想」早見表
ここまで解説した指標の見方を、シンプルな表にまとめました。デジタル庁のダッシュボードを見る際は、この表を参考にしてみてください。

データの見方の「型」がわかると、他の自治体との比較がとても面白くなります。
お住まいの自治体の財政状況が気になる方は、デジタル庁のサイトからいつでも確認できますので、ぜひ一度ご覧になってみてください。
地方財政(都道府県ごと)
地方財政(都道府県ごと)に関するダッシュボード | デジタル庁
地方財政(市町村ごと)
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