現代の日本において、政治が社会の課題に適切に対応できているかという問いに対し、多くの人が疑問を抱いている。政策が効果的に機能していないと感じる要因の一つに、データを活用した合理的な意思決定の不足がある。本稿では、現代日本の政治が社会の課題に適切に対応できていない現状を踏まえ、その理由と改善策について考察します。
目次
- イシューから始めない政治
- 定量データをもとに政策判断をしていない
- 行った政策の効果測定をしていない
- 何のために統計を取っているのか?
- KGI・KPIの設定と政策のPDCAサイクル
- なぜ「データに基づく政治」が進まないのか?
- まとめ
イシューから始めない政治
日本の政治における大きな課題の一つとして、本質的な問題(イシュー)を起点とした議論が十分に行われていない点が挙げられる。本来、政策立案は社会が直面する課題を正しく特定し、その解決に向けた手段を検討するプロセスである。しかし、日本の政治はしばしば「対症療法的」な対応に終始し、根本的な問題へのアプローチが不足している。
多くの政治家は、具体的な解決策を公約として掲げるが、その背景にある問題を十分に理解していないことが多い。
解決策を考える前にまず「イシューが解決された状態」とは何かを明確にすることが重要である。問題の本質を定義せずに対策を打ち出しても、社会全体にとっての最適解にはなりにくい。
定量データをもとに政策判断をしていない
政策決定において、データドリブンな意思決定は極めて重要である。しかし、日本の政治はしばしば感覚や世論の動向に流され、客観的なデータを活用する姿勢が希薄である。 経済政策において「成長戦略」や「景気回復」を掲げるものの、実際にどの指標が改善すれば「景気回復」と言えるのかが明確でないことが多い。賃金の上昇、雇用の安定、企業の設備投資の増加といった具体的な指標に基づく政策目標が定められていなければ、施策の効果を検証することができない。 また、過去の政策の結果を十分に分析せずに、新たな政策が立案されるケースも少なくない。一例として、消費税の引き上げにより税収は増えたものの、消費の冷え込みや経済成長の鈍化が起きたというデータがあるにもかかわらず、同様の施策が繰り返されることがある。一つのデータをもとに政策を決定するのではなく、複数のデータを総合的に分析し、政策の効果を検証することが求められる。
行った政策の効果測定をしていない
政策の効果を正しく測定し、それを次の政策立案に活かす仕組みが確立されていないことも、日本の政治の課題である。
教育政策では、ゆとり教育の導入や廃止など、大きな方針転換が繰り返されてきたが、それらの施策が学力向上や社会適応能力の向上にどのような影響を与えたのか、十分な検証がなされていない。結果として、現場の混乱を招くだけでなく、効果的な教育改革が進まない要因となっている。
何のために統計を取っているのか?
日本は多くの統計データを収集しているが、それを政策に十分に活かしているとは言い難い。統計の目的は、社会の現状を正しく把握し、問題点を明らかにし、それを解決するための方策を考えることである。 例えば、労働市場のデータを見ると、非正規雇用の増加や男女間の賃金格差などの問題が明確に浮かび上がる。これらのデータを活用して、雇用の安定化や労働環境の改善に向けた具体的な政策を打ち出すべきである。しかし統計データが政策立案の裏付けとして十分に活用されず、むしろ「都合の良い数字」を探す傾向が見られる。
KGI・KPIの設定と政策のPDCAサイクル
企業経営において、目標管理の指標としてKGI(Key Goal Indicator: 重要目標達成指標)やKPI(Key Performance Indicator: 重要業績評価指標)が用いられる。政治においても、政策の効果を評価するためにこれらの考え方を導入するべきである。 例えば、「日本の平均賃金をOECD加盟国の上位50%に引き上げる」といったKGIを設定し、それを達成するためのKPIとして「最低賃金の年率上昇率」「企業の正規雇用割合」「女性の管理職比率」などを定めることで、施策の進捗を数値で管理できる。 また、政策のPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを確立し、施策を実施した後に定量的な評価を行い、その結果を次の施策に活かす仕組みが必要である。
なぜ「データに基づく政治」が進まないのか?
- 短期的な人気取りの政治
- 選挙サイクルが短いため、政治家は長期的な視点よりも、短期間で成果をアピールできる政策を優先しがちになる。
- 官僚主導と政治家のリーダーシップ不足
- 政策立案は主に官僚が行いますが、政治家がその内容を十分に理解せず、KGIやKPIの設定、効果測定に対する意識が低いことが、データに基づく政治の推進を妨げる要因の一つになる。
- 利害関係の調整に重点が置かれる
- 既得権益を持つ層への配慮が優先され、客観的なデータに基づいた合理的な改革が進みにくい状況にある。
- メディアと世論の影響
- メディアの報道や世論の感情的な議論が、データに基づく冷静な分析よりも優先される傾向があり、政策決定が合理的な方向へ進みにくい。
まとめ
日本の政治が的を外し続ける理由は、「イシューから始めない」「データを活用しない」「効果測定をしない」という3つの要因にある。 これを解決するには、
- 「統計データを活用し、問題を正確に把握する。」
- 「KGI・KPIを設定し、政策の効果を数値で評価する。」
- 「PDCAサイクルを確立し、政策の改善を繰り返す。」
これらの仕組みを導入することで、より的確な政治の実現に近づけると考えられます。
いい政治ドットコムでは、政治家の公約が統計データに基づく政治課題とマッチしているかを確認できるような仕組みを提供していきます。ぜひ、皆さんもこの問題について考え、意見を共有していただければと思います。